大会エッセイ②

手を離した瞬間に悪手と気づくのはどうしてだろうか?背筋が凍りついたと同時に、顔面から血の気が引くのを感じた。私は、△76歩と突いた瞬間▲97の角が53まで届くのを完全に見落としていたのだ。ノータイムで▲54歩と取り込まれて、暗澹(あんたん)とした気持ちになった。

ここで、正座から胡座に座り直す。長考に入る合図だ。悪手を指した後の心の声を聞いてみよう。

「はぁ…やっちまったわー。全然見えてなかった。ついてねーなぁ…うっかり一発で終了とかどんだけ寒いんだよ。で、どうすんの?これ。」

悪手を指した後は、いつもこんな事を考えている気がする。逆に優勢の時は、「必勝すぎる。超必勝」と思いながら指して逆転されることが多いのだが…

とりあえず、この局面は同銀と取るしかなさそうである。間違いなく▲53歩がとんでくるだろう。飛車と銀の両当たり。どう見ても一刀両断されているではないか。以下、飛車を逃げて銀を取られてそこでこちらも44の銀を取って、52歩成で必敗形の完成…考えているうちに目眩がしてきた。

しかも考えれば考えるほど、一本道で変化の余地がなさそうである。

 

そんな事を考えながら力なく同銀と着手。以下、▲53歩△72飛車▲54飛車△66角▲52歩成と進行。

飛車の逃げ場所は遠くがセオリーだが、72がささやかな工夫。これが吉と出るか凶と出るか。と金を作られていよいよ敗勢かと思ったが…続く

 ※私が後手番です。図面の▲と△が逆になりますm(__)m

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