将棋と私①「出会い」

「将棋ってどうやるの?」

その何気ない一言が、長い旅路の幕開けになるとは当時は知る由もなかった。

 

小学校6年生の冬休み。お正月に私は親戚の家に行った。

確か昼食後の事だったと思う。

皆でお茶を飲みながら、歓談していた時にひょんなことから将棋の話題になった。

私は、将棋というゲームがあることだけは知っていたが、どうやるか皆目見当がつかなかった。そんな事を考えながら、ぼんやり話を聴いていると、

山形県天童市で毎年春に、人間将棋っていうのをやってるんだよ」伯父が情景を思出したのだろう、笑顔で楽しそうに話し始めた。

なんでも、将棋の駒に人間が扮して山頂で対局が行われるらしい。人間が駒になる!?そもそも山頂で将棋するってなんだそりゃ。全くもって意味不明である。子供心にいくつものはてなが浮かんで不思議で仕方なかった。

「桜が満開だと、とてもきれいなんだよ。でもだいたいいつも葉桜なんだよなぁ」伯父の話につられてみんなそうそう、と相槌を打っている。その時だった。自分でも思いがけない事が口を衝いて出た。

「将棋ってどうやるの?」

私は将棋とは正反対の世界、スポーツに夢中だった。だが、知りたくなったのだ。その未知の「将棋」という世界を。

すると、どこからともなく将棋盤と駒が現れた。あーそういえば、将棋ってこんな感じだったな。伯父と私より年下の従兄弟が駒の動かし方とルールを教えてくれた。さっそく従兄弟と対局することになった。

「一体どうすればいいんだろう・・・」

私は暗闇の中をさまよっているような感覚に襲われた。どの駒を動かせばよいのか、さっぱり分からなかったのだ。

「王手!」

従兄弟の嬉しそうな声とともに、私の王将は詰まされた。

どうやら負けたようだ。

何か釈然としないものが心に残った。しかし、浮かんできたき感情は驚くべきことに「楽しい」だった。

そして、これを境に私は一気に将棋の世界にのめりこむ事になる。続く