雁木戦法の復権「最終回」~実戦編~


f:id:tenkaichibigbo:20170617073903j:image

再掲。図は△33歩まで

以下の手順

▲44金△39飛車成▲49金△同竜▲同銀△59飛車 以下手順略 投了

 
f:id:tenkaichibigbo:20170617082021j:image

 

△33歩と受けられてみると、まだまだ難しい。ここが勝敗を左右する場面だ。飛車がいるために▲34桂と打てない。ならば、その飛車をどかそうという発想が産まれる。ただし、飛車を追うと△39飛車成と王手が飛んでくる。それが複雑な終盤により拍車をかけているのだ。私は、最後の長考に入った。残り時間がみるみるうちに減っていく。緊張は極限に達した。

 

直観は▲45銀。対して△39飛車成▲69歩でどうやら耐えていそうだ。読みの本線はこれだったが、▲69歩の瞬間手番が相手にいくのが怖すぎる。他に何かないか。再度、目を皿のようにして盤を凝視した。

終盤は先手を取れるかどうかは勝敗に直結する。その瞬間、閃いた。そうか!これなら行けそうだ。時間にして20秒。残りはいよいよ1分に迫ろうとしている。

私は、▲44金を決行。より手厚くという意味だが、ここは直観に従って▲45銀が優った。技巧もそれで+600点との判断だった。

ただし、これはまだ罪が軽かった。

後手は当然△39飛車成と攻めこんでくる。

ここで、再度の読みを入れて確認。残り時間は1分2秒。自分を信じて▲49金と竜を叱りつける。5秒後、後手は△同竜。ここまでずっとややリードしていたこの将棋だったが、ついにこの場面で逆転した。なんと評価値が-1130に振れたのだ。しかし、私は事の重大さに気づいていない。竜を逃げられないから取ったんだろうな、そう軽く考えていた。後手、本当の本当のノータイムで△59飛車打ち。-1402点。この瞬間全てが終わった。私は、直前に飛車を渡した事を完全にうっかりしていたのだ。

悪手を指した瞬間の悲しみや自分に対する怒り。それは筆舌に尽くしがたいものがある。たった1手のミスで、積み上げてきたものが音を立てて崩れるのだ。

この場面、野球で言えば3対2で8回を迎え、観客の盛り上がりも最高潮。ところが一気に大量点が入って試合が決まってしまったようなものだ。ため息とブーイング。私は、自分自身にヤジを飛ばした。

残り41秒まで考えて▲69銀打ち。上記の事を考えていたのと、残り数秒は気持ちの整理である。後手は△55飛車成。この角を軸にずっと攻撃を組み立ててきたのだ。エースがいなくなった今、私に勝ち目はない。以下、▲33金から特攻したが届かず投了となった。

 

全7回のツノ銀雁木自戦記、いかがだったろうか?私自身も雁木について深く掘り下げることができてとても楽しかった。

対局中の心情や読み筋も、読者の皆様に伝わったならとても嬉しい。

最終回は情が移ってなかなか筆が進まなかったが、おかげさまで終えることができた。これからも雁木を楽しみながら続けていきたいと思う。ご愛読に感謝。ありがとうございました。