回り道~3度の飯より将棋が好き♪~

将棋のエッセイや戦術、私の日常について綴っています。

大山杯・アマ王将南東北予選③

次の1手は▲37桂馬。桂馬と香車を両方さらわれるのはたまらん、というわけだ。それと同時に私はあるシナリオを描いた。果たしてそれは実現するのだろうか。

 △39飛車▲45桂馬△19飛車成

ここで▲75歩が眼目の一手。

 香車を損したのは、王手飛車ラインに呼ぶための布石。いわば囮だ。

それに対して△46歩は斜めのラインをケアして手筋に思えたが、▲55角が盤上この一手の大攻防、大急所の一手。


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ここに角を設置したことにより、斜めの制空権を握ることに成功した。

しかし、この手に対して△69竜には驚いた。

竜が近すぎて攻めずらいはずなのだが…普通は銀に紐をつけながら29竜くらいかと思っていたので、またもや意表をつかれた格好だ。

気を取り直して、▲74歩。ついに美濃囲いの急所に手がついた。△54歩と角を追ってきたが、▲46角と歩を補充しながら銀に当てる。

ちょっと思い出してほしい。46に角を引けたのは、桂馬を活用して45歩をかすめ取ったからである。角の安定を描いたのが当初のシナリオだったのだ。

ここではっきり優勢を自認した。

△22角と切り札を放ってきたが、冷静に▲77桂馬と受ける。

△64歩と手筋で応戦してきたが、私は銀には目もくれず▲73歩成と決めにいった。△同桂馬に▲74歩△65桂馬に▲64角と飛び出した。

勝った、と思った。ところが。ノータイムで△93玉。


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またもや意表をつかれた。しかも、存外難しい。残り時間は2分。直観は▲66銀。しかし、これには△同竜?▲同金△同角で敗けだと思った。だが△66同竜は反則である。

信じられないことに私の読みはこれだった。

それほどパニックだったのだ。

次に読んだのが▲55歩。△同角と勝負されたときが分からず、結局切り捨てる。

そして、結局第3の候補手にすがった。

この時間、僅かに1分。

▲95歩。この瞬間、私の手から勝利の2文字がこぼれ落ちた。

△77桂馬成。私はまだ事態の重さに気づいていない。

▲同金直。

これで勝ちを確定させたと思った。しかし、相手の手が自陣にものすごい勢いで伸びてきた。ん?

△67竜

あ!!!私は椅子から飛び上がった、ような感覚に襲われた。そして声が出そうになるのをかろうじてこらえた。

なんと、金をただで取られてしまった。

同金と取り返したいが、22の角が遠く睨んでいて竜を取れないのだ。

一瞬で血の気が引いた。その後に猛烈な自分への怒りと共に頭に血がのぼって、顔面が紅潮した。

この将棋は仕掛けの所から、紆余曲折、あらゆる難関をくぐり抜けてきたのだ。そして、勝利を掴みかけていた矢先に起こった悲劇。

たった一手、たった一手▲95歩のミスだけで全てが水泡となった。

マチュアの私ですらこうなのだ。プロの先生の気持ちを慮ると、痛切を通り越してしまう。

 

ここでのミスは致命的で、挽回する手段は残されていなかった。私は程なくして投了を告げた。感想戦は何を話したか覚えていない。会場に響く対局時計の電子音がやたら虚しかった。