第26回北部将棋大会の続きの記事です。
3回戦 対M君
優勝候補のM君は初戦で強豪のI氏、2回戦で元県名人のK氏を破って連勝スタートです。
M君の先手で初手▲26歩から対局が始まりました。
序盤戦~駒組から仕掛けまで~
角道を開けたままにして駒組を進めているのが後手の工夫です。先手の形をギリギリまで見てから、角交換型にするか、通常の角道を止めるノーマル型にするか考えていました。
5筋を突いて銀を57に上がってきたので、方針を決定しました。
▲57銀以下は、△88角成▲同玉△33銀▲98香△92香
後手は一度33に角を上がっているので、自分から角を交換するのは手損になります。
ただ、先手陣は5筋を突いているので角の打ち込みの傷があります。
手損と角の打ち込みの傷を天秤にかけて指せると判断し、角交換型の相穴熊を選びました。
△92香以下はお互い自陣の整備です。金銀を寄せながら間合いを計ります。
しばらく進み、今後手が△62に金を寄せてさらに固めたところです。
ここで先手は駒音高く▲46銀!と上がってきました。
後手から角の打ち込みがありそうな形ですが、大丈夫なのでしょうか。
△39角から考えてみたのですが、読んでみると自信がないことに気づきました。
仮に△39角と打つと以下、▲38飛△84角成▲35歩と進みます。
馬を作る構想が悪かったので、また振り出しに戻って読み直しです。ここで差がついてしまうと逆転は難しくなるため、思わず長考となりました。
長考の末、▲46銀に対して△22飛と2筋に備える手を選択。そこでノータイムで▲66角と打たれてまた手が止まりました。
この角打ちによって後手陣にさらに圧力がかかっています。先手にとって懸念だった39の地点角打ちの傷も解消されました。
▲66角に対しては、長考の末、△44銀と対抗。以下、▲68金寄△74歩とお互い自陣に手を入れます。ここからは、いよいよ中盤戦です。
中盤戦~難解な攻防~
△74歩と突いた手を見て、先手はついに仕掛けてきました。
△74歩以下、▲35歩△同歩▲24歩△同歩▲35銀
66角のラインを活かして先手は攻め込んできましたが、△73角で飛車を攻めながらカウンターを狙います。
△73角以下は、▲46歩△32飛▲44銀△同歩▲37歩
お互い銀を手持ちにして局面が一段落です。対局中は互角と感じていました。
私はここで軽く△34飛車と浮きました。
この軽い飛車浮きによって、24の歩と44の歩を同時にケアしています。43に銀を打たれる傷がありますが、打たせても指せるとの判断です。
「飛車の形が軽いですが、それでも銀を打ってきますか?」と先手に問いかけています。「棋は対話」ですね。
私が時計を押したと同時に先手は駒音高く▲43銀を決行。本局一番の高い駒音でした。駒音や指先にこもった雰囲気からも自信がうかがえます。
▲43銀以下は、△33飛▲24飛△43飛▲21飛成
先手の主張は2つです。
- 銀と桂の駒損だが、敵陣深くに竜を作った
- 後手の飛車の働きが悪い
一方、後手には3つの主張があると思っていました。
- 銀と桂の交換でやや駒得
- 持ち歩が1枚先手よりも多い
- 先手陣の29桂と19香の働きが弱い
以上のようなことを考えながら、▲21飛成に対して△28歩と揺さぶりました。
ここまで快調に飛ばしてきたM君の指し手が止まりました。しばらく指しそうな気配がありません。
先手の主張は「竜が敵陣の急所に利いている」ことなので、竜で取りにくい意味があります。
△28歩は最善か分かりませんでしたが、相手の心理面に訴えかける狙いもありました。待つこと数分、先手は驚きの鬼辛抱を選択します。
次回に続きます