歩っかる将棋ブログ

2024年から山形県天童市を中心に将棋の活動を再開しました。将棋大会の様子や自分の実戦を紹介しています。

第26回北部将棋大会➁

第26回北部将棋大会の続きの記事です。

 

3回戦 対M君

優勝候補のM君は初戦で強豪のI氏、2回戦で元県名人のK氏を破って連勝スタートです。

M君の先手で初手▲26歩から対局が始まりました。

序盤戦~駒組から仕掛けまで~

作戦の岐路。

角道を開けたままにして駒組を進めているのが後手の工夫です。先手の形をギリギリまで見てから、角交換型にするか、通常の角道を止めるノーマル型にするか考えていました。

5筋を突いて銀を57に上がってきたので、方針を決定しました。

▲57銀以下は、△88角成▲同玉△33銀▲98香△92香

角交換型の相穴熊へ。お互い神経を使う展開に。

後手は一度33に角を上がっているので、自分から角を交換するのは手損になります。

ただ、先手陣は5筋を突いているので角の打ち込みの傷があります。

手損と角の打ち込みの傷を天秤にかけて指せると判断し、角交換型の相穴熊を選びました。

△92香以下はお互い自陣の整備です。金銀を寄せながら間合いを計ります。

しばらく進み、今後手が△62に金を寄せてさらに固めたところです。

がっぷり四つ。角の打ち込みに気をつけながら駒を配置する。

ここで先手は駒音高く▲46銀!と上がってきました。

積極的な構想。

後手から角の打ち込みがありそうな形ですが、大丈夫なのでしょうか。

△39角から考えてみたのですが、読んでみると自信がないことに気づきました。

仮に△39角と打つと以下、▲38飛△84角成▲35歩と進みます。

後手は馬を作ったが、馬の働きが悪い。先手ペース。

馬を作る構想が悪かったので、また振り出しに戻って読み直しです。ここで差がついてしまうと逆転は難しくなるため、思わず長考となりました。

長考の末、▲46銀に対して△22飛と2筋に備える手を選択。そこでノータイムで▲66角と打たれてまた手が止まりました。

攻防兼備の角打ち。39の地点をケアしながら、後手の飛車の動きもけん制している。

この角打ちによって後手陣にさらに圧力がかかっています。先手にとって懸念だった39の地点角打ちの傷も解消されました。

▲66角に対しては、長考の末、△44銀と対抗。以下、▲68金寄△74歩とお互い自陣に手を入れます。ここからは、いよいよ中盤戦です。

後手も先手の飛車を角でけん制するための準備。お互いに駒組が飽和点。決戦間近。

中盤戦~難解な攻防~

△74歩と突いた手を見て、先手はついに仕掛けてきました。

再掲。図は△74歩まで

△74歩以下、▲35歩△同歩▲24歩△同歩▲35銀

本格的な戦いへ。後手はここで反撃。

66角のラインを活かして先手は攻め込んできましたが、△73角で飛車を攻めながらカウンターを狙います。

事前に突いた△74歩を活かして応戦。

△73角以下は、▲46歩△32飛▲44銀△同歩▲37歩

駒の損得はなし、玉の堅さ、駒の働きもほぼ同じ。後手の選択肢は?

お互い銀を手持ちにして局面が一段落です。対局中は互角と感じていました。

私はここで軽く△34飛車と浮きました。

フッ軽。読みというよりは感覚の1手。

この軽い飛車浮きによって、24の歩と44の歩を同時にケアしています。43に銀を打たれる傷がありますが、打たせても指せるとの判断です。

「飛車の形が軽いですが、それでも銀を打ってきますか?」と先手に問いかけています。「棋は対話」ですね。

私が時計を押したと同時に先手は駒音高く▲43銀を決行。本局一番の高い駒音でした。駒音や指先にこもった雰囲気からも自信がうかがえます。

後手の△34飛を全力で咎めにきた。お互いの主張が激しくぶつかりあう。

▲43銀以下は、△33飛▲24飛△43飛▲21飛成

お互いに主張がある局面。後手は次の手に期待した。

先手の主張は2つです。

  • 銀と桂の駒損だが、敵陣深くに竜を作った
  • 後手の飛車の働きが悪い

一方、後手には3つの主張があると思っていました。

  • 銀と桂の交換でやや駒得
  • 持ち歩が1枚先手よりも多い
  • 先手陣の29桂と19香の働きが弱い

以上のようなことを考えながら、▲21飛成に対して△28歩と揺さぶりました。

歩っ軽。歩で軽く先手陣を揺さぶる。

ここまで快調に飛ばしてきたM君の指し手が止まりました。しばらく指しそうな気配がありません。

先手の主張は「竜が敵陣の急所に利いている」ことなので、竜で取りにくい意味があります。

△28歩は最善か分かりませんでしたが、相手の心理面に訴えかける狙いもありました。待つこと数分、先手は驚きの鬼辛抱を選択します。

 

次回に続きます